←前のページへ次のページへ→
〜 日本の環状運転する路線紹介 〜

社会交通工学専攻M1年 栗原 一暢

1.はじめに

 毎度お馴染みとなりましたが、2007年に引き続き2009年2度目の会長となりました、栗原が今回も記事を書かせていただきます。
 皆さんは環状運転するなら、もう一寝入りして一周して、または逆回りで行こうなんて思う方や、夏は涼みに長く乗ろうと思うことがあると思うであろう。特に乗り鉄かぁ。一周していればまた戻ってくるので、経路を気にせず利用できる路線である。日本には鉄道の環状路線がいくつか存在する。環状運転をする効果として、大都市のターミナル駅をいくつかに分散でき、駅周辺の混雑解消できることがあげられる。

 環状線とは、都心から一定の距離を保ちながら多数の路線と交わる鉄道路線のことをいう。例えばJR武蔵野線やJR南武線、東武野田線や新京成電鉄、環状運転を行っていない愛知環状鉄道なども定義としては環状線扱いとなる。
 実際に環状運転する路線をあげると、千葉県の山万ユーカリが丘線、ディズニーリゾートライン、東京都のJR山手線、都営地下鉄大江戸線、愛知県の名古屋市営地下鉄名城線、大阪府のJR大阪環状線、兵庫県の神戸新交通ポートアイランド線、愛媛県の伊予鉄道松山市内線(1・2系統)が存在する。
 ここで紹介するのは、都心部で活躍する鉄道路線であるJR山手線、都営地下鉄大江戸線、名古屋市営地下鉄名城線、JR大阪環状線とした。


2.路線紹介

(1)JR山手線

◆概要

 山手線は東日本旅客鉄道(JR東日本)の路線であり、駅数29駅、一周34.5kmを約1時間で結んでいる。渋谷、新宿、池袋の三大副都心を繋ぐ。一周総称して山手線と呼ばれているが、実際には田端−東京間が東北線、東京−品川間が東海道線であり、品川−田端間(円の左側)20.6kmが本来の山手線となる。最も混雑する区間は上野−御徒町間であり、混雑率は205%である。
 山手線は1909年10月12日に命名された。それ以前は、新宿−赤羽間の品川線、池袋−田端間の豊島線、大崎−大井連絡所間の貨物支線と呼ばれていた。これらの路線を総称して当時山手線と名付けられた。


◆運行形態

品川〜渋谷〜新宿〜池袋〜田端〜上野〜東京〜品川と進むのが外回り、品川〜東京〜上野〜田端〜池袋〜新宿〜渋谷〜品川と進むのが内回りと一般的に呼ばれている。日中は環状運転を行っているが、平日朝ラッシュ後や夜間においては、運行本数減少することから入庫する編成がある。車庫は大崎、品川、池袋に存在し、これに伴い、3つの行き先を見ることができる。
駅や電車の案内表記は外回り・内回りを使わず、一周する電車は「○○・△△方面」(205系までは「山手線」のみ)、途中止まりの電車は「□□」と駅名のみの表記をしている(写真1)。




写真1 山手線駅の発車案内LED


◆車両

 かつては101系や103系が活躍していたが、自分の中で山手線といえばやはり黄緑色の帯を巻く205系である。(写真2)。1963年より現在のウグイス色になった。以前はチョコレート色やカナリア色の車両があった。205系登場当時は10連であったが、混雑緩和のために1991年12月、10号車に6ドア車が組み込まれ11両化された。1985年3月より営業運転を始めた205系は、20年に渡って東京の大動脈を運ぶ足として活躍してきたが、2005年4月24日を最後に山手線から姿を消した。写真はさよなら運転時に撮影したものである。その後、さまざまな組み換えや先頭車化改造が行われ、鶴見線や川越線、仙石線などの各地方路線の老朽化した車両を置き換えた。

 現在はE231系500番台で統一されており、7号車と10号車に6ドア車を組み込んでいる(写真3)。ドア上に液晶ビジョン(LCD)表示器が設置されており、サービス向上に繋がっている(写真4)。車内自動放送も首都圏では、山手線で初めて採用され、また2006年7月よりデジタルATCの供給が開始された。E233系52編成が活躍中である。JR東日本では、2009年10月で山手線命名100周年を迎えることから、トウ502編成が復刻調ラッピング電車としてお目見えしている。この記念電車の側面には、明治製菓のチョコレートの広告も兼ねており、9月7日から12月4日まで運行する予定となっている。(写真5)





写真2 山手線205系




写真3 山手線E231系




写真4 山手線E231系車内LCD




写真5 山手線E231系復刻調ラッピング


◆その他

 新大久保での転落事故などの影響により、安全対策としてホームドアを設置する計画がある。都営地下鉄三田線や東京メトロ丸ノ内線も、ホームドアを設置した。しかしながら、今の山手線でホームドアをすぐ設置しようという訳にはいかない。現行の山手線には6ドア車があることにより、リフレッシュ工事時に、田端−田町間に京浜東北線の車両が山手線の線路を走行した際、ドアの間隔がずれることから、新たに形式車両を導入し、全4ドア車11両編成に置き換える予定となっている(現在京浜東北線に6ドア車が採用されていないのはこのためと思われる)。6ドアを採用しなかった理由として、少子化傾向にあること、や東北縦貫線の開通に伴う利用客の減少を想定しているからである。今後田町−品川間に新駅が設置される計画もある。
 現在ブームとなっている発車メロディーの話題では、恵比寿駅では第三の男、高田馬場駅では鉄腕アトム、駒込ではさくらがご当地ソングとして使われている。駅の自動放送は外回りが男性、内回りが女性に統一されており、ATOS(東京圏輸送管理システム)も1998年より導入されている。



(2)都営地下鉄大江戸線

◆概要

 1991年12月10日、光が丘−練馬間のわずか3.8kmが、当時都営地下鉄12号線として開業した。2000年4月20日、国立競技場までの延伸時に愛称「大江戸線」が使用された。一番候補が多かったのが「ゆめもぐら」であったが、石原都知事の意見により二番目に多かった「大江戸線」が採用となった。江戸の周りを大きく回るということで名づけられた。現在全38駅と、日本の地下鉄では最も数が多く、所要時間は80分かかる。環状部27.8km、放射部12.9km、全40.7kmの路線である。
 大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線に次ぎ、鉄輪式リニアのミニ地下鉄が採用された。


◆運行形態

 大江戸線は基本的に環状運転ができないため、それぞれ終点がある。光が丘を出発した電車は都庁前を通り、大門、両国、飯田橋を通り、都庁前に到着する。その後都庁前より同じルートを折り返す。ドア上に路線図があり、それを見るとわかりやすい(写真6)。たとえば東新宿から六本木に行く場合、都庁前で反対側のホームへ乗り換えなければならない。基本的に内回り、外回りという案内は出さず、「○○・○○方面」か「△△経由□□行き」と表記される(写真7)。ラッシュ時には清住白河行きも存在する。




写真6 ドア上にある大江戸線路線図




写真7 大江戸線の発車案内LED


◆車両

 車両は12−000系が使用されている。1990年の量産車が生産される前に試作車が生産され、馬込検車場で試験が行われ、現在は豊島区の千早フラワー公園に保存されている(写真8)。量産車は当初全体をクリーム色に塗装されていたが(写真9)、1997年の新宿延伸時に増備された3次車からはクリーム色の塗装が省略されている(写真10)。同時に、1・2次車の中間車に3次車が塗装をされ組み込まれ、8連化された。今後、新型車両を導入する計画がある。




写真8 千早フラワー公園に保存されている12−000系試作車両




写真9 大江戸線12−000系1次車




写真10 大江戸線12−000系3次車


◆その他

 大江戸線は、都営地下鉄で初めてワンマン運転を行った路線である。今では珍しくホームドアが設置されていないが、今後設置される予定である。また、現在の都営地下鉄では放送前に短い接近メロディーが使用されているが、当初は大江戸線以外には導入されておらず、最初に接近メロディーが使用開始された路線でもある。
 割と新しい地下鉄のため、地下深いところにホームが設置してあったり、長いエスカレータや長い通路があったりと、地上からのアクセスが困難な駅もある。





 
- 33 -
次のページへ→